D13 プロジェクトYデザイナー 本澤賢太郎 (撮影日:2025/06/26)

本澤賢太郎氏は82年に現在の西武ビル別館にあった草刈順氏のJKデザインの流れをくむプロジェクトYに入社。当時のYはビル1棟に70人程のメンバーがいて、写真撮影からデザイン、コピーまでを請負う広告デザイン会社で、西武全店、セゾングループの新聞広告、ポスター、チラシ、DM等全て手掛けていた。表現決裁は常にギリギリで、撮影から掲載まで綱渡りだった。勝ち負けで表現2パターンを用意するライオンズセール新聞広告や、年間10か月を中元と歳暮だけに費やすチーム、正月、バレンタイン、ホワイトデイ、新入学、母の日、父の日、敬老、クリスマス等催事記企画、シーズンファッション立上広告等どれもポスターからチラシまでのフル媒体だった。連絡手段も机上電話と印刷会社営業マン来社が途中からバイク便になったがメールはなかった。西武マーク媒体に要求される表現の水準は高く、版下貼込みデザインには体温や人の気配があった。寡黙な上田社長はラフでも黒い部分は鉛筆で真っ黒に塗る真摯な人だった。小売の広告はすぐ結果が判るのでそれが自身の喜びになった。デジタルは便利だが欠落した温もりをデザインで補うべきだろう。