E6 元西武百貨店専門店部 元王立園芸協会常務理事 鈴木邦彦 (撮影日:2025/07/10)

1969年、鈴木邦彦氏は千葉大学園芸学部を卒業。自治体や園芸会社や種苗会社への就職が一般的だった中、西武百貨店からの求人に応募し入社した。最初食品部に配属されるも、2年後に園芸部門に異動。当時は朝日工業は生物工学研究所、西友は赤城植物研究所、百貨店は舞鶴農場と植物研究所を開設した時期で、朝霞配送センターにガーデンセンターを作る計画もあった。また90年花博へのセゾングループ取組方向模索のため、グループ20人程で世界の植物園巡りのミッションに行き、オランダでは10年ごとの(フローリーアード)園芸博覧会と連動した住宅地開発などを視察し、帰国後計画立案した。池袋9期改装では堤会長から屋上園芸自営化指示を受け、大学の先輩ネットワークで在日大使夫人に人気のセントポーリアやベゴニア等、当時国内に希少な植物を集めた黄色いグリッド型温室「花と緑のサニーサイドハウス」を田中一光デザインで作り、マスメディアからの取材で話題となった。また商品を練馬の西部日観から直接仕入れるようになり、中元歳暮センターには入賞シンビジウムが登場し、西武の中元歳暮商品にフラワーギフトが定着化した。この頃、西武は日本で初めて人工芝(巻きクリーンターフ)を販売し、後楽園球場や屋内でも使われ始めた。また国際椿大会に向け、舞鶴農場では世界の椿の原種を集め、西武は中国産の黄色い椿を展示し、毎年椿展を開催した。90年の英国展では英国の王立園芸協会(RHS)の日本支部を作り、本格的イングリッシュガーデンを日本に紹介した。西友の赤城自然園は、クレディの竹内氏が農学部出身だった縁でクレディセゾンに移管され、林野社長に引き継がれた。池袋10期改装では5階オーマイダイニング内ハウスグリーンなど店内に5か所ものフラワーショップが作られた。店内装飾は東光園の松田氏、各店改装時の祝い花は装飾の島田圭子氏がプロデュースした。西武は商品だけでなく豊かな暮らしの環境を売る中で花の存在は大きかった。05年にはリンドレイのボタニカルアート原画展を東京芸大美術館など全国3か所で展開。堤会長は江戸時代、豊島区内の染井村にあったガーデンセンターの歴史も踏まえ、植物と共生した暮らしの楽しみ方を重視していて、今も自然の中の八ヶ岳高原音楽堂、軽井沢現代美術館の庭、赤城自然園等に堤清二氏とセゾンの生活総合産業への取組は継承されている。